最新式よりジジ式! ちょい古グルマ ≪メルセデス・ベンツSLクラス[R129]≫

ちょっと脂が抜けた頃がいい、そんなメルセデスの最右翼

メルセデス・ベンツSLクラス[R129]

とにもかくにも〝センス〟で乗る!
最新式ではないからこそ威張りも利いてまだまだ現役。
これぞ「GG」が提唱する〝ちょい古〟グルマ。
今月のターゲットは、1990年代のバブルの象徴でもあったメルセデスのラグジュアリー・クーペ、R129型SLです。
自動車評論家の故・徳大寺有恒さんの名言に、「メルセデス・ベンツは、ちょっと脂が抜けた頃がいい」というものがあります。

このフレーズを目にした時、まだ若輩者だった私はポンッと膝を叩きました。
メルセデス・ベンツといえば自動車の生みの親、押しも押されぬ陸の王者です。
当時の私は、そのメルセデスのぴっかぴかの最新モデルに乗るのはちょいと気恥ずかしいというか、ワビサビに欠けるのではないかという思いが拭えませんでした。
そうした気持ちを、巨匠は見事にひと言で言い表してくれたのです。

これはメルセデス・ベンツには一切責任はありませんが、このブランドはいつの時代も成功者の証。
ハタから見ると、「カネ! オンナ!! クルマ!!!」的な上昇志向をクルマの形にしたものだと受け取られがち。
ギラギラした欲望の塊が4つのタイヤを履いているというか、簡単に言うとエバっているように見えるのです。

一方、新車で買えた時期から10年、20年と経ったメルセデスは、ギトギトした脂がイイ感じで抜けていきます。
権威にすがっているような恥ずかしさもありませんし、「どないだー!」というギラギラ感も失せていきます。
2018年の現在でも、「メルセデス・ベンツは、ちょっと脂が抜けた頃がいい」というフレーズには説得力があると感じます。
脂が抜けた頃に味わい深くなるメルセデス・ベンツの最右翼として推したいのが、SLです。
SLとはご存じのように、いつの時代もメルセデスのラインアップで最上級にあたる2シーターのオープンスポーツ。
スポーティで優雅でエレガントなモデルですが、最新モデルはどうしても、ギトギトし
た欲望の脂に包まれて、その実体がボヤけてしまいがちです。

でも脂が抜けた頃なら大丈夫。
SLが本来的に持っている贅沢さを、色眼鏡ナシで満喫することができるのです。
なかでも1989年に発表され、90年から日本に導入されたSL(R129型)に惹かれます。

R129型が開発されたのは80年代、ということは、メルセデス・ベンツが「最善か無か」というスローガンでクルマを作っていた時期にあたります。
85年にデビューしたW124型Eクラスを称して「最後のミディアムクラス」なんて呼ぶ人もいます。
しかし、古き良き時代のメルセデスを知るためにも、次第にコンディションのいい個体が減りつつある80年代生まれのR129型に、いまこそ乗っておきたいと強く思います。
いざR129型SLと対面してみると、そのソリッドさと優雅さが巧みに融合したスタイリングにうっとりします。
デビュー当時はまさにバブル経済華やかなりし頃。
当時はSLというだけで地上げ屋かという目で見られましたが、今ならそんなことはありません。
内側から知性が滲み出る、美しい造形ではありませんか。
SLを見ていると、デビューから30年近くも経過しているのに瑞々しさを保っていることに驚かされます。

個人的には、やはり80年代に登場したスーパースター、小泉今日子を思い出します。
目を閉じて、胸に手をあてて想像してみてください。
皆さんが30代でキョンキョンが20代では、決して付き合うことはできなかったでしょう。
でも、あれから30年。経験を積み、酸いも甘いもかみ分けてきたいまなら、52歳になったキョンキョンと楽しくデートできるような気はしませんか?
いまSLに乗るということは、キョンキョンとデートするのに近いと私は思うのです。

R129型のSLは、90年に日本市場へ導入されてから2001年まで製造された長寿モデル。
したがって、モデルライフの間にエンジンの変更や追加などが何度も行われました。
5ℓのV型8気筒に始まり、3.2ℓの直列6気筒(後にV6に移行)、そして6ℓや7.3ℓ(AMG)のV型12気筒といったモンスター級までラインアップされます。

ダウンサイジング+ターボ全盛の今の時代、直6もV8もV12も絶滅危惧種。
古き良き時代のメルセデスに乗ると同時に、古き良き時代のエンジンを経験する最後の機会でもあるのです。
カーンとレーシィに回るV8や怒濤のV12も捨て難いですが、やや控え目ながらきれいに回る直6モデルの、バランスの良さにも惹かれます。

2018年にSLに乗って改めて感じるのは、丁寧に造られた品格あるクルマだということです。
「脂が抜けた頃がいい」ということはつまり、時間が経過しても衰えないということ。
踏み応えのある、ちょっと重いアクセルペダルと、最近のスポーツモデルよりは大径で細いステアリングを丁寧に操作していると、しみじみこの時代のメルセデスの美点を味わう
ことができるのです。

オープンだけに、クルマの品格と合わせて、何を身に付けるのかも大事になってきますね。
バブル期のソフトスーツでコスプレするという離れ業もありますが、これからの季節、メタルボタンのダブルの紺ブレに、ゆったりシルエットの白いコットンパンツでクラシックに品よくまとめる、なんていうのはいかがでしょう。
MERCEDES BENZ SL 500

MERCEDES BENZ SL 500

車両スペック&参考価格
価格278万円(税込)
1995年式 検30年11月 走行5万1000km
2オーナー車 ブリリアントシルバー プリテンショナー付きシートベルト 純正8穴アルミホイール デスビ・ローター純正新品交換済み
問い合わせ/arj(アレックスリードジャパン)

リアシートはありませんが荷物は置けます

リアシートはありませんが荷物は置けます

スポーツカーにとって、ラゲッジスペースの有無は時に死活問題にもなりますが、R129型SLの場合、前席後ろのスペースがまるまるラゲッジスペースとなっています。トランクと合わせればかなりの容量を確保。これは便利!

「最善か無か」の哲学を反映したインテリア

「最善か無か」の哲学を反映したインテリア

コストダウンによって品質や機能性が損なわれることを良しとしていなかったメルセデス。R129型SLは、そんな「最善か無か」の哲学をギリギリ反映していた時代のモデルです。現在のメルセデスにはない重厚感を感じることができます。

カムに乗ったときが気持ちいい名機M119

カムに乗ったときが気持ちいい名機M119

R129型SLのラインアップは、6気筒の320、8気筒の500、12気筒の600というグレード構成。取材車両は1995年式のSL500であり、320psの名機M119を搭載。DOHCならではの、パワーバンドに入った時の吹け上がりはサイコーです。


文/サトータケシ 写真/佐藤亮太

【問い合わせ】
arj(アレックスリードジャパン)
住所:東京都世田谷区玉堤1-20-7 arj世田谷1F
TEL:03-3704-7177
営業時間:9:30~18:30
定休日:月曜日

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