今月のGG的ときめき新⾞ DS 7 クロスバック

DS 7 クロスバックで 体験する〝パリ留学〟

今は昔、クルマのカタログを最後のページから読んだ時代がありました。そう、皆さんも心当たりがあるでしょう。最後のページを見て、「こっちは110psだけどこっちは105psか」と、そんな風にスペックで優劣を決めていた時代があったのですよね。余談ですがアイドルのスリーサイズを見て、「このコはバスト88㎝で、このコは85㎝か」と比較していたのと同じ時代です。

 でも、みんな賢くなって、いまではスペックで選ぶ人はいなくなりました。良い105psもあれば、悪い88㎝もある。そんな当たり前のことが、ようやく 分かってきたのです。さらには、そもそも自分は非力なクルマを工夫して乗りこなすのが好きだとか、貧乳が好きで好きでたまらないんだとか、経験を重ねることで価値観はどんどん多様化してきました。

 昔は最高出力ばかり見ていたのが、こういう生活を送りたいからこのクルマ、とか、こんな人になりたいからこのクルマ、という風にクルマ選びは変わりました。

知り合いで某インテリア雑誌の編集者として働くAさんは、「ガイシャは駅前留学だ」という自説を持っています。どういうことかというと、輸入車に乗るということは、その国の文化を学ぶことだということです。
 若かりし頃、2代目フォルクスワーゲン・ゴルフの信者だったAさんは、根っからのドイツ党でした。ライカのカメラを持ち歩き、ブラウンの髭剃りを使い、モンブランの万年筆を胸ポケットに挿し、「質実剛健で合理的なのが一番」というのが口グセでした。

 でも40歳を過ぎた時に友人のアルファロメオの155を運転したその日から、Aさんは変わりました。おしゃれなパンツをはくようになり、首にスカーフを巻くようになって、もちろんアルファ155も買いました。Aさんは、「ドイツがすべてだと思っていたなんて、どれ程視野が狭かったのだろう」と当時を振り返ります。

 Aさんの次の〝留学〞先はフランス。シトロエン・エグザンティアの言葉では表現できない優しい乗り心地から、フランス人のモノの考え方を知ったのです。

 といった具合に、いろんな国に留学してきたAさんですが、最近は元気がありません。どこの国のクルマも似たようになり、留学したくなるようなクルマがないというのです。仕方なくAさんは、ちょい古の方向に進んで、90年代のキャデラックで古き良き時代の大らかなアメリカを味わっています。でも、ここでAさんに伝えたい。これぞフランス留学だぞ、と。

いつもと違うデザインを見て 未体験の乗り味を楽しむ

DS 7 CROSSBACK GRAND CHIC BlueHDi 14
DS 7 クロスバック グランシック ブルーHDi
SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:4590×1895×1635mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1700kg
エンジン:ターボチャージャー付直列4気筒DOHC(ディーゼル)
総排気量:1997cc
最高出力:177ps/3750rpm
最大トルク:400Nm/2000rpm
駆動方式:前輪駆動
タイヤ:235/45R20
ホイール:20インチアロイ
価格:592万5926円/DS AUTOMOBILES(DSコール)

 ご存じの方も多いと思いますが、DSオートモービルはシトロエンのラグジュアリーなラインとして独立したブランド。いや、単に上級というだけではありません。よりアヴァンギャルドなラインというほうが正確でしょう。

 そのDSの最新モデル、DS7 クロスバックのデザインは、誰もが目を見張る華やかなもの。フロントグリルの格子模様はルーヴル美術館の中庭にあるピラミッドがモチーフだとかで、そりゃフランス人にしかできないデザイン。インテリアも前衛的で、オペラというグレードの腕時計のベルトをモチーフにしたシートなどは、よくこんなの考えついたな、とため息が出ます。オペラというインテリア名もスゴいですね。日本車メーカーに、カブキという名のインテリアを設定する勇気があるでしょうか……。他の2つも、リヴォリ、バスティーユと、パリの通りと広場の名前。例えて言うなら、トヨタ・クラウンに「晴海通り」というインテリアを設定するようなものですから、彼らがいかにパリという街にプライドを持っているのかが分かります。

 話を戻しましょう。ブッ飛んだデザインのシートなのに掛け心地がいいのは、いかにもフランス車らしい特徴です。もう1つ、路面の凸凹をふわーん、ふわーんとかわす乗り心地も、フランスらしさいっぱいで、シトロエンのハイドロニューマチックサスペンションを彷彿とさせます。ちなみにこの乗り心地は、DSアクティブスキャンサスペンションという仕組みがもたらすもの。簡単に説明すると、25m先の路面の凸凹をカメラでチェックして、それに合わせてサスペンションを設定するというハイテクです。

 1955年に登場したシトロエンDSも独創的なハイドロニューマチックサスペンションと宇宙船のようなルックスで大評判でしたが、DS 7 クロスバックもそんな歴史を受け継いでいます。実際に乗ると、ソフトな乗り心地、素直に反応するエンジンなど、見た目ほど尖ったモデルではないことが分かります。また、フォルクスワーゲンのゴルフなんかと同じCセグメントに属するモデルですから、見た目ほどデカくなく、日本で使うにはジャストサイズ。

 海外旅行の醍醐味は、いつもと違う景色を見て、いつもと違うモノを食べ、自分達と違う考え方の人達に出会うこと。DS 7 クロスバックもいつもと違うデザインを見て、未体験の乗り味を楽しみ、日本と違う発想に触れられるのです。ポンと乗ったらそこがパリ、駅前留学より簡単です。
文/サトータケシ イラスト/遠山晃司

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