ジジカジ ≪デート≫(前編)

淑女はカジュアルもお好き?

高級フレンチ、会員制バー、個室のすし屋……。
どれもとてもおいしいけれど、「デートは高いお店に連れて行けば大丈夫だろう」なんて思っていませんか?
たまには、カジュアルなデートが乙女心をくすぐることもあるのです。
元AV女優で元日経記者の作家・鈴木涼美さんが体験した世にも楽しいカジュアルなデートについて耳を傾けてみましょう。

鈴木涼美(すずきすずみ)
1983 年東京都生まれ。慶応義塾大卒、東大大学院修了。専門は社会学。セクシー女優、日経新聞記者などを経て2014年からフリーの文筆業に。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。現在は雑誌やウェブの連載を始め、テレビコメンテーターなどとしても活動中。

別に豪華絢爛が必ずしもいいわけではないけれど、デートにそれなりにお金をかけてもらうのを嫌う女は少ない。
高いから美味しいとは限らないし、高いから素敵とも限らないけれど、自分にそれだけの価値がある、と実感したいからだ。
ケチられると、ケチられた分だけ、お前にはこれくらいがお似合いだと言われている気がしてムッとする。
それなりに経済力のある、年上男性とのデートならなおさらだ。
相手の身に着けているものや車が高級であるのに、デートをケチられては気分が悪い。
それに、余裕のある恋人は女にとっても自慢なのだから、どうせならデートの内容まで自慢できるようなものにしてほしい。
それに、自分のお金では行かないようなお店にいるのは、正直気分がもちろんいい。

ただ、あくまでそれは、デートにお金をかけるほどに、相手が自分に夢中になってくれている、という気分でもあるわけで、本音を言えばホテルのバーなど退屈だし、高級フレンチはカロリー高いし、糖質制限している身としてはすし屋だって毎回だときつい。
本当は私たちだって、肩の力を入れずにすむお店が好きだし、美味しい定食も食べたい。

ああ安く済まされているな、と思わせず、それでもありきたりな有名店や高級店ではないところにも案内したい。
これは男性としてはとても素敵な考え方だが、いかんせん矛盾とも言える行動なので、少しテクニックが必要かもしれない。
全くそんな気持ちでなく、安くて絶品のグルメを紹介したつもりが、私ってこの程度しかお金を使ってもらえないの、と思われたらとても心外だ。

私もそんな勘違いをした経験がある。その人はトンカツの食べ歩きをしていたらしい整形外科医で、数多の店を調べ抜いた経験から、彼が今のところ都内で一番だ、と認める名店に連れて行ってくれた。
本当に心からそのお店のトンカツを食べてみてほしかったのだと今なら思えるが、当時の自己評価の曖昧な若い私は、初デートはトンカツか……とちょっとげんなりしてしまったわけである。

今思えばくだらない僻み根性だが、女性というのがそういうことを思ったよりもずっと気にする生き物であることは気に留めておいて損はない。その上で、自分も楽しく、満足度の高いカジュアルなデートには何が必要なのだろうか。

一つ、わかりやすく素敵だった、と思うカジュアルデートがある。
……

後編に続く!→Click!