ジジが遺すべき語れる時計「パテック フィリップ ゴールデン・エリプス」

ゴールデン・エリプス Ref.3738/100 自動巻き、Cal.240搭載、18KRGケース、ケースサイズ31.1×35.6mm、ブラウン・ソレイユ文字盤、ゴールド植字インデックス、30m防水、アリゲーターストラップ。290万円/パテックフィリップ(パテックフィリップジャパン・インフォメーションセンター)

著名になったパテックフィリップ。時計マニアからは「パテックフィリップを買っておけば間違いナイ」との評価で、もはや孤高の存在としての地位は揺らぐことはないでしょう。そもそもパテックフィリップとは、単に高価な時計を作り続けてきただけの存在ではないのです。

時計のすべてが手作りで、ごく限られた人たち、そう王侯貴族のものであった時代から連綿と、突出した製品であるとの評価を得てきたというのは並大抵のことではありません。というのも、現代に生きる我々と王侯貴族とでは、そのメンタリティに格段の差がある。あって当たり前です。
なにせ向こうは不労所得。先祖代々の広大な領地からのアガリで食ってますから、焦りというものがない。もしかしたら一文無しに、なんて心配もなく、金銭なんぞ使いたい放題。贅の限りを尽くすというように、予算との戦いですらなく、「どこまでいけるか」という想像力との戦いになってしまっています。

1850年から51年にかけて製作された、英国のヴィクトリア女王のためのポケットウォッチ。美しい七宝の蓋をあけると、PATEK,PHILIPPE&Co,Geneveと銘が入れられている。同装飾のブローチ付き。

そんな試練を勝ち抜いてきたのがパテックフィリップ。当時の狭い世界での好評というのはすべて口コミのなせるワザですから、ウソや誇張が混ざっていたら次の注文は入りません。1839年に前身であるパテック,チャペック社を設立して以来の長い歴史こそが、品質の証明でもあるのです。

さらに、ゴールデン・エリプスをおすすめする理由はこうです。いまの時計界は復刻調デザインが人気で、徐々にその勢力を増しています。このゴールデン・エリプスも「復刻」といえば「復刻」に見えるかもしれませんが、それが大間違い。

イタリア初代国王ヴィットーリオ・エマヌ エーレ2世のものとされるタイムピースの表蓋にはギョシェ彫りが施され、多色七宝で皇族の紋章が描かれている。この優れた装飾技法が貴族層に愛された理由です。

このモデル、復刻どころか発売初年度からずーっと作り続けられてきたもの。どちらかといえば生きた化石に近い。しかし、その化石ぶりが幸いして、時代が一巡。いまや「なかなかオシャレ」と見なされるようになっております。

こちらはロシア皇帝アレクサンドル2世のものとされる懐中時計。ブルーの七宝に国王のイニシャルが装飾された華麗な裏蓋と、同じ装飾が施されたボックスも付属された仕様に、思わず目が奪われますぞ。

黄金比率に基づいたエターナルな美学など、専門的にはいくらでも褒められますが、長命だという事実こそが、優秀さを物語っているのではないでしょうか。時計がシンプルだからこそ、語り継いでいくべきなのです。
写真/宇田川 淳